粉体塗装技術は1950年代から世界に 登場し、大きな進歩を遂げてきた。ベト ナムでは、 近年、 粉体塗装技術が多くの 生産分野で発展している。 本稿では、こ の技術に関する基本知識、 およびベトナ ム企業の現状と今後の発展の方向性につ いて解説する。

粉体塗装技術の概要

粉体塗装の原理

粉体塗装は、 静電法を用いて、 材料 (金 属または非金属)の表面をプラスチック、 着色剤、 添加剤を含む塗料の層でコーティ ングする方法だ。 負極 (-) に帯電させた 塗料の粒子で、 正極 (+) に帯電させた塗 装対象の材料を覆うのである。 

粉体塗装の工程

洗浄 → 乾燥 → 檢查 → 塗裝

粉体塗装の用途

粉体塗装はプラスチック、木材、 マイ カなどの非金属材料に施すことができる が、最も一般的なのは、 アルミニウ ム、亜鉛、銅などの金属への塗装だ。 昔 からの水性塗装と比べてはるかにメリッ トが多い粉体塗料は、現在、次のような さまざまな分野で使用されている。

  • インテリア製品, 装飾品
  • 屋外用建材: フェンス、ゲート、手すり
  • 工業製品: 電気キャビネット、 はしご 型ラック、
  • 自動車、オートバイ、 自転車向け製品

粉体塗装を請け負っている 北部企業の現状

現在、製品が消費者の手元に届く前に 表面を保護するための塗装方法には、 従 来の水性塗装と粉体塗装の2つがある。 製品の特性や顧客の要請による場合を含 め、一部の小規模企業は依然として従来 の水性塗装を行っているものの、ほとん どの製造企業では粉体塗装を採用してい る。 特に、 電気キャビネット、 はしご型 ラック、 樋管、 鉄骨構造物、 家電製品、 自動車、オートバイなど、 高い品質を必 要とする分野などで使われている。 ただ し、投資コスト、塗装エリアの確保といっ たさまざまな理由から、 粉体塗装の工程 を省略している企業もある。

粉体塗装に投資する企業は2つのタイ プに分かれる。 1つ目は粉体塗装の専門 企業で、 主に、 粉体塗装を必要とする顧 客、工場、 小規模企業のニーズを満たす ことを目的としている。 主要製品は手す り、 ゲート、 はしご型ラック、フェンス など。 粉体塗装の専門企業は少数で、会 社規模や工場の面積は小さく、技術レベ ルは低い。 2つ目は機械製品を製造する 企業で、 主に社内での製造のために粉体 塗装システムを整備する。 これらの企業 は年間生産量の多い大企業だ。

筆者の調査によると、 北部地域のほと んどの企業における粉体塗装システム は、 半自動または手動によるものだ。 つ まり、ラインでは多くの工程が欠けてい たり、省略されたりしており、塗装の品 質と生産性は依然として作業者のレベル とスキルに依存している。 自動化された 完全な粉体塗装システムを備えているの は、最新式の一貫システムに投資できる 数少ない大企業に限られる。 以下は、筆 者が調査した北部の一部の省・市におけ ある企業の、 粉体塗装の工程に関する評価 と解説である。

表面洗浄工程

洗浄工程は、 粉体塗装を含む塗装作業 全般において非常に重要な工程である。 しかし、多くの企業ではこの工程を省い たり、時代遅れの技術を用いて非常に粗 雑に行ったりしている。 バリの研磨、錆 層の洗浄、酸化などの作業が発生する が、ハンドグラインダーとワイヤーブラ シのみを使用している企業が多い。 一方、 大企業では、 金属表面を洗浄するために ショットブラストまたはサンドブラスト を導入している。 これは生産性と表面品 質を考えると最適な洗浄方法であり、洗 浄後の表面への塗料の密着性が向上する ことで製品の寿命を延ばし、 環境保護や 労働者の健康保護につながる。 ただし、 製品のサイズや形状によっては投資コス トが高くなる。 強みや伝統、 独自性のあ る製品を持たない小さな企業は投資しな いことが多い。 Lilama Corporation、 Lisemco Song Da などの大企業でさ え、備えている設備は一貫システムでは ない。 一部の企業は自動ショットブラス トを導入しているが、依然として人の手 で作業する企業もある。

金属表面の洗浄後、 処理槽に入れて油 脂やほこりを取り除く。 処理槽は通常、 錆洗浄酸槽 水槽、 脱脂槽、 化学薬品槽 から成る。 処理槽での洗浄は、脱脂→水 洗→表面調整→リン酸塩処理→水洗の順 となる。ただし、この工程は企業によっ てバラつきがあり統一されていない。 処 理槽がない、または処理槽が1~2槽し かない企業もある。 製品の特性 (サイズ、 形状)、 企業の規模、 工業排水処理の問 題も処理槽への投資に影響している。 手 すり、ゲート、 大型鋼構造物などの製品 には、大型の処理槽が必要だ。 これは、 伝統のある独自の製品を持たない小規模 企業にとっては難しい課題である。

乾燥工程

洗浄が終わると、 金属表面を乾燥させ る。 乾燥方法は、 赤外線乾燥、 ガス乾燥、 自然乾燥などがある。 ガス乾燥は金属表 面用ヒートガンを使用する方法 (HTCO 社が導入中)で、シンプルかつ効果が高 い。 製品はコンベアシステムに吊るされ、 全自動で温度・速度が制御された乾燥炉 を通過する。 自然乾燥は、 サイズの小さ い薄い板金にのみ行われる。 各乾燥方法にはそれぞれメリットとデ メリットがあるが、 一部の企業では手作 業で粗雑に行われている。 これは、塗料 の製品表面への密着性に影響を及ぼす。

プライマー乾燥工程

原則として、製品はプライマー(下塗 り) 塗装を経る必要がある。 プライマー 塗装後、 乾燥室を通った製品は、このプ ライマー塗装層によって材料の表面の密 着性がより高められる。 しかし、ほとん どの企業は、 材料と生産コストを節約す るためにこの工程も省略する。 また、 顧 客のプライマー塗装不要という要請に従 うケースもある。

仕上げ塗装

製品は、 塗装層の均一性と品質を確保 するために自動スプレーガンシステムで 仕上げられる。 ラインによって、 企業で はシングルスプレーガンまたはダブル スプレーガンを使用する。 塗装の質、色 は正しい混合率で決まる。 塗装する前に、 金属表面が清潔で汚れがないこと、ハ ンガーおよびコンベヤーベルトを確認す る。 それぞれの製品は100~200mm 以 上離して吊るす。 手作業による塗装では、 角・端→平面→下方→上方という正しい 順序で塗装を行う必要がある。 対面にい る人に影響を与えないよう塗装の方向に 特に注意しなければならない。

乾燥成形および仕上げ

粉体塗装後の製 品は乾燥室に戻さ れる。この工程に より、 塗料が表面 にしっかりと均 一 に美しく付着する。

製品検査

色、 密着性、 被覆率を評価するために 製品の外観検査を行う。 より高い要件の 場合は、 塗料の厚さ、 密着性などを測定 する専用機器で検査する。

粉体塗装産業の潜在性

上記の解説から、 ベトナムの粉体塗装 産業の潜在性は非常に大きいことがわか る。 ますます激化する競争圧力を前に、 企業は間違いなく粉体塗装システムおよ び補助設備に投資し、 それらを完備する 必要がある。 それをして初めて、製品は 日本、米国、欧州の市場に参入するため

の厳しい基準をクリアできることになる。 現在、北部の省では、自社製品の生 産のために一貫式の自動粉体塗装ライン を備える企業 (VietPhap MEEC、 Seiki Innovations Viet Nam Hawee など) が 増えてきている。 これらの企業は、主に 電気キャビネット、 はしご型ラック・樋管、 板金構造物の塗装に対応するほぼ完全な 粉体塗装システムを持っているため、 外 国の顧客やパートナーからその製品を高 く評価されている。

今回はベトナム企業の活動に焦点を当 てた。次回は日系など外資系企業の活動 について紹介する。

(ソース: Nguyen Hoang Hang **D. HTCO Vietnam Joint Stock Company. Seiki Innovations Viet Nam Co.,Ltd.
Hawee Production and Trading Joint Stock Company 様よりご協力をいただきました.)